大阪地方裁判所 昭和43年(行ウ)650号 判決 1976年3月12日
大阪市浪速区日本橋東三丁目一四の八
原告
佐藤四郎
右訴訟代理人弁護士
片山善夫
同
豊川正明
同
鈴木康隆
同
梅田満
同
松井清志
同
臼田和雄
同
稲田堅太郎
右訴訟復代理人弁護士
桐山剛
大阪市浪速区船出町四一
被告
浪速税務署長
三村睦雄
右指定代理人検事
岡崎真喜次
同法務事務官
大橋嶺夫
同大蔵事務官
住永満
同大蔵事務官
仲村清一
同大蔵事務官
瀬戸章平
同大蔵事務官
石川智
右当事者間の更正処分取消等請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一、当事者の申立て
一、原告の申立て
1 被告が原告に対し昭和四〇年一〇月二五日した各更正処分(以下本件各更正処分という。)のうち次の部分を取り消す。
(一) 昭和三七年分所得税の総所得金額を二、一四七、八九四円とした更正処分のうち六二四、〇五四円をこえる部分
(二) 昭和三八年分所得税の総所得金額を一、七七八、一四〇円とした更正処分のうち七四二、五六九円をこえる部分
(三) 昭和三九年分所得税の総所得金額を一、八四九、六五三円とした更正処分のうち三五七、五一三円をこえる部分
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二、被告の申立
主文と同旨
第二、当事者の主張
一、原告の請求の原因
1 原告は、運送業を営む者であって、大阪市浪速区内の零細商工業者が自らの生活と営業を守ることを目的として組織した浪速民主商工会ならびに大阪府下の各民主商工会が結集した大阪民主商工会団体連合会の会員である。
2 原告は、被告に対し、次のとおり、白色申告書による確定申告をした。
(一) 昭和三八年三月一五日 昭和三七年分所得税につき、総所得金額六二四、〇五四円、所得税額三八、八五〇円
(二) 昭和三九年三月一六日 昭和三八年分所得税につき、総所得金額七四二、五六九円、所得税額四五、一五〇円
(三) 昭和四〇年三月一五日 昭和三九年分所得税につき、総所得金額三五七、五一三円、所得税額〇円
3 被告は、昭和四〇年一〇月二五日、次のとおり、本件各更正処分および加算税の各賦課決定処分をし、同年同月二六日、原告に対し通知した。
(一) 昭和三七年分所得税につき、総所得金額二、一四七、八九四円、所得税額四三三、一四〇円、加算税額二一、三〇〇円
(二) 昭和三八年分所得税につき、総所得金額一、七七八、一四〇円、所得税額二八八、七六〇円、加算税額一二、一五〇円
(三) 昭和三九年分所得税につき、総所得金額一、八四九、六五三円、所得税額二八一、五〇〇円、加算税額一四、〇五〇円
4 原告は、被告に対し、昭和四〇年一一月二四日、右各処分につき異議申立てをしたが、被告は、同年一二月二五日、これを棄却するとの決定をし、同年同月二六日、原告に対し、その旨通知した。そこで、原告は、大阪国税局長に対し、昭和四一年一月二四日、審査請求をしたが、同局長は、昭和四三年三月二九日、原処分の一部を取り消して総所得金額を次のとおりとする旨の裁決をし、原告に対し、同年同月同日、その旨通知した。
(一) 昭和三七年分所得税の総所得金額 一、六七〇、二七二円
(二) 昭和三八年分所得税の総所得金額 一、三二四、一三三円
(三) 昭和三九年分所得税の総所得金額 九七四、七八七円
5 しかし、被告のした本件各更正処分には、次のような違法がある。
(一) 原告の本件各係争年分の総所得金額は次のとおりであるのに、被告は原告の所得を過大に認定して本件各更正処分をし
(1) 昭和三七年分所得税の総所得金額 六二四、〇五四円
(2) 昭和三八年分所得税の総所得金額 七四二、五六九円
(3) 昭和三九年分所得税の総所得金額 三五七、五一三円
(二) 被告の更正通知書には、その理由として、「総所得金額が過少と認められます。」と記載されているのみで、その後の異議申立てに対する決定および審査請求に対する裁決によっても、更正の理由は明らかにされなかった。これは、行政不服審査制度における争点主義に違反している。
(三) 国税通則法第二四条によると、更正処分は調査に基づいてされるものであり、かつ、右調査は納税者の生活と営業を不当に妨害することのない適正なものでなければならないことはいうまでもない。
ところで、原告は、浪速民主商工会会長、同会税金対策部長等を歴任し、積極的に同会の活動をしてきたが、被告は、同会を適視し、原告を弾圧するため、次のような違法悪質な調査をし、その違法な調査に基づいて本件各更正処分をした。その結果、一〇件以上の得意先が原告と取引を停止し、原告および原告の家族は、財産上の損害のみならず、多大の精神的損害を蒙った。
(1) 原告は、昭和四〇年七月三日午前九時三〇分、浪速税務署において、浪速民主商工会会員である訴外八木豊国の税金につき、同税務署稲田課長および栄田係長に抗議した。すると、被告は、次々と原告の得意先に赴き(同年同月同日午後中川無線株式会社、協立電器株式会社、山菱ラス株式会社、同年同月五日松屋電器株式会社、大通ガソリン株式会社、同年同月六日二宮無線株式会社、同年同月七日外山食品株式会社等)、原告に関する調査に協力をしないとその得意先を徹底的に調査し課税するといって脅迫し、その結果、原告に得意先を多数喪失させた。
(2) 原告は調査のために訪れた浪速税務署万谷調査官に対し、同年七月二九日、原告の住居が改築中であるから、帳簿書類の提示を同年九月末日ごろまで猶予してほしい旨要求したところ、同調査官はこれを承諾した。しかるに、同調査官および北村調査官は、同年八月四日、原告方において、原告の不在中、従業員の注意に耳をかさず、ほしいままに、「電話番号索引」を手にとり、そこに記載されている商店、個人の氏名等を無差別にメモした。
(3) 被告は、同年同月一一日古書籍組合へ、同年同月一二日大通産業へ赴き、更正の期間制限を受ける昭和三六年から昭和四〇年七月までの間に原告と取引をした資料を提示するよう強要した。
(4) 被告は、原告に対し、同年八月一四日、一方的に、「青色申告にかかる書類等の提出要求」なる文書を送付し、書類等を提出しないときは青色申告の承認を取り消す旨脅迫した。
(5) 被告は、同年同月一六日、原告の取引先であるワンビシガソリン店、大通産業、堀内運送、古書籍組合、野川運送等を「調査」し、さらに、右ワンビシガソリン店、堀内運送の得意先をも「調査」したが、これは調査に名をかりた嫌がらせである。
(6) 前記万谷調査官および北村調査官は、同年同月二〇日、浪速区飲食店組合事務局長鮎川と面談して原告の私行、性格を詳細に聞き出し、さらに野川運送に対し、「裏付資料を出さない場合は、お前のところも徹底的に調べるぞ。」と脅迫して調査に名をかりた嫌がらせをした。
(7) 万谷調査官は、原告に対し、同年同月二四日、申告書の提出期限が到来していないにもかかわらず、「昭和四〇年の調査をしたい。」と述べて嫌がらせをし、原告に記帳中の帳簿を提示させた。
(8) 万谷調査官は、同年同月二五日、堀内運送に赴き、「裏付資料を出さない場合は、管轄の天王寺税務署に連絡してお前のところを徹底的に調査するぞ。」と脅迫し、さらに、北村調査官は、同年同月二八日、野川運送に赴き、「佐藤運送をかばう気なら、お前の所得を徹底的に調べてやる。」と述べて脅迫した。
なお、被告は、昭和四〇年七月三日からいわゆる反面調査を繰り返したが、原告に対して調査をはじめたのは、同年同月二九日になってからである。このように、納税義務者に対する調査よりさきにした反面調査は違法といわなければならない。また、原告は、右同日住居改造中という合理的な理由に基づいて被告の調査を拒否したが、その後、同年八月二四日から被告の調査に協力している。このような場合、被告が反面調査をすることは許されないところ、被告はあえて前記反面調査をしたものである。
(四) 更正処分は適正かつ平等にされなければならないのに、被告は、原告が浪速民主商工会役員であるため他の納税者と差別して、しかも同会の弱体化を狙って、本件各更正処分をした(とりわけ、原告は、昭和三七年分所得税について確定申告をした後、昭和三八年一〇月七日、被告の指導に従い、実額によって修正申告をしたから、これによって、原告の昭和三七年分所得税の税額は確定したと考えていた。しかるに、被告は、特段の事情がないのに、通常の取扱いに反し、あえて、さきのような理由で更正処分をした。)
6 よって、原告は、被告に対し、前記のような判決を求める。
二、被告の認否
1 原告の主張する請求原因事実第1項のうち、原告が運送業であることは認めるが、その余の事実は知らない。同第2ないし第4項は認める。同第5項のうち、被告の更正通知書には理由として「総所得金額が過少と認められます。」と記載されていただけであったことは認めるが、その余の事実は否認する。同第6項は争う。
三、被告の抗弁
1 原告の本件各係争年分の総所得金額およびその内訳は別表(一)記載のとおりであるから、その範囲内でされた本件各更正処分(ただし、前記裁決により一部取り消されたもの)に違法はない(なお、本件訴訟の審理の対象は、租税債務たる課税標準および税額等が客観的に存在するか否かであり、しかも法は積極的具体的に一定の手続要件を定めていないから、被告が、本件各更正処分がされた後に、調査、収集した資料に基づく事実を主張立証することはなんら妨げないというべきである。)。
2 なお、別表(一)のうち、自己所有車による収入の「その他の経費」の率(以下本件実調率という。)四六・七パーセントは、大阪国税局長の指示によって、昭和三八年、同国税局管内全税務署八三署のうち大蔵省組織規程上種別「A」とされている税務署四三署管内において、小型貨物自動車により運送業を営む者で、青色申告者については実額調査、白色申告者については収支実額調査を行った個人業者から、年の途中で開廃業したもの、他の業種を兼業していてこれを区分計算できないもの、特殊車で運送業を営むなど業態が異常なもの、不服申立てないし訴訟係属中のもの等特殊事情のあるものを除いた七七例について、収入金額、標準外経費控除前所得金額、所得率等を把握して得たものである(別表(二)参照。)。
3 原告は、被告が原告の本件各係争年分の「その他の経費」(標準経費)を推計することは許されず、またこれに基づく推計には合理性がないと主張するが、右主張は全く理由がない。これを詳述すると、次のとおりである。
(一) 被告は、原告に対し、昭和四〇年七月二九日から数回にわたって、本件各係争年分の帳簿書類の提示を求めたが、原告はこれに応じなかった(そして、原告の右態度は被告が異議申立ての審理をしているときも変らず、わずかに大阪国税局長が審査請求を審理しているとき各人別の運送収入と支払賃金を記入した水揚帳および事故賠償金領収書を提示し、賃金支払手数料の計算方法を説明したにすぎない。)。そのため、被告は、原告の本件各係争年分の「その他の経費」(標準経費)を実額で把握することができなかったので、やむをえず、これを推計したものであって、推計課税の要件に欠けるところはない。
(二) 原告は、肩書住所地で、一般自動車運送事業の免許を受け、最大積載量が二トン以下である小型貨物自動車約一〇台(昭和三七年八・九台、昭和三八年一〇・二台、昭和三九年一〇・〇台)を所有し、運転手六、七名を雇傭して運送業を営む者である。(もっとも、原告は、右の自己所有車による営業のほか、自動車を所有する運転手に依頼して運送させる方法および他の運送業者に委託して運送させる方法によっても営業している。しかし、いずれの営業方法による場合であっても、原告が運送する距離は短かく、運送する範囲はほぼ一定している。)。
ところで、原告のような一般小型貨物自動車運送事業を営む者の必要経費は、ガソリン代(燃料費)、車輛の維持修繕費用、減価償却費等車輛に関する費用が主たるものであるから、いきおいその額は所有している車輛台数によって左右される(もっとも、比率は変らない)こととなるが、立地条件、営業年数、従事員の能力等によって著しく変動することはない。そして、右車輛に関する費用およびその余の費用が業者によって多少異ったとしても、実調率を算出する際、それらは捨象され、平均値のうちに吸収されるから、実調率を適用するときは、これを無視することができる。本件実調率も、都市部の一般小型貨物自動車運送業者の平均的な標準経費率を示すものであって、原告の主張する立地条件、営業の規模、形態、年数等は、右の平均的な数値のうちに吸収されるから、個々の具体的な立地条件、営業の規模、形態、年数等を問題にする余地はない。
しかして、原告の営業形態は、通常の一般小型貨物自動車運送業者のそれと異なるところがないばかりでなく、昭和三七年から昭和三九年までの間に大きな変化にみられなかった。
そうすると、原告の本件各係争年分の自己所有車による収入の「その他の経費」(標準経費)は、被告が調査することができた全資料七七例に基づいて得た本件実調率によって算出すれば十分である。
四、原告の答弁
1 被告の主張する抗弁事実第1項のうち、本件各係争年分の雑収入、地代、支払利子、事故賠償金、専従者控除の額ならびに譲渡所得(損失)の金額はいずれも認めるが、その余の事実は否認する。同第2項は知らない。同第3項のうち、原告が最大積載量が二トン以下である小型貨物自動車によって運送業を営む者であり、その運送する距離は短かく、運送する範囲もほぼ一定していること、および、原告の業態が通常の一般小型貨物自動車運送業者のそれと異なるところはなく、また、昭和三七年から昭和三九年までの間に原告の営業形態につき大きな変化がみられなかったことは認めるが、その余の事実は否認する。
2 被告は、本訴において、本件各更正処分がされた後に調査収集した資料に基づく事実を主張立証するが、このような主張立証は許されない。
3 さらに、前記一、5、(三)で述べたように、被告がした調査は違法なものであり、しかも原告は正当な理由によって被告の調査を拒否し、その後これに協力したのであるから、被告は原告に対して実額によって課税することができないということはできない。そうすると、本件各係争年分の所得税を推計によって課税することは許されないというべきである。
4 また、仮にそうでないとしても、本件実調率を適用して、原告の本件各係争年分の自己所有車による収入の「その他の経費」(標準経費)を推計することには合理性がない。すなわち、
(一) 一般小型貨物自動車運送業者の標準経費は、都市部の同業者のそれに限ってみても、車輛の新旧、積載量、運転手の能力、店舗の立地条件その他営業の規模、形態、年数いかんによって多大の差異を生ずるから、その性質上右各条件を捨象する実調率を適用して原告の自己所有車による収入の「その他の経費」(標準経費)を推計することは許されない。とくに、原告の所有していた小型貨物自動車は、ミゼット(最大積載量約〇・三トン)二台、その他(最大積載量一トン)数台であって、そのほとんどは中古車であったから、運搬能力が低く、多額の標準経費を必要としたのであり、右のことは一層妥当する。
仮に百歩譲って、実調率を適用して原告の本件各係争年分の自己所有車による収入の「その他の経費」(標準経費)を推計するとしても、その前提となる同業者の本件各係争年分の自己所有車による収入の平均的な「その他の経費」(標準経費)の率を得るためには、昭和三七年から昭和三九年について右各条件の類似した多数の同業者を調査資料として選定しなければならない。
ところが、被告は調査資料として、わずかに七七例(うち大阪府五一例)を選定したにすぎない。これは、昭和三八年に小型貨物自動車運送業者が一、二七〇名も大阪府トラック協会に所属していたことにかんがみると著しく少ない。また、右七七例の標準経費率をみると、最高六四・三八パーセント(別表(二)54)、最低二五・二五パーセント(同50)であり、その差は三九・一三パーセントにもなり、被告の選定した調査資料の立地条件、営業の規模、形態、年数等が類似していないことを示している。
(二) 本件実調率は、昭和三八年のものであり、昭和三七年および昭和三九年について同じ方法で実調率を把握すれば、調査資料が異るため、本件実調率と相当異った数値を得ることができたはずであるから、昭和三七年および昭和三九年について本件実調率を適用することは許されない。
(三) なお、被告が本件実調率を把握する際に、調査資料を選定した基準が合理的、統一的なものかどうか、大阪国税局管内の各税務署長が同局長の指示どおり調査資料を選定したかどうかも疑わしい。
第三、証拠
一、原告
1 甲第一号証、第二号証の一、二を提出した。
2 証人中筋和夫、同万谷正治、同野川速水の各証言を援用し、原告本人尋問の結果を援用した。
3 乙第一号証、第二、第三号証の各一ないし三、第四号証の一、二、第一五ないし第一七号証、第二二号証の各成立は知らないが、その余の乙号各証の成立は認めると述べた。
二、被告
1 乙第一号証、第二、第三号証の各一ないし三、第四、第五号証の各一、二、第六、第七号証の各一ないし三、第八ないし第一〇号証、第一一号証の一ないし一〇、第一二ないし第一八号証、第一九号証の一ないし一二三、第二〇ないし二二号証、第二三号証の一ないし三、第二四号証の一、二、第二五ないし第二七号証を提出した。
2 証人越本吉太郎の証言を援用した。
3 甲号各証の成立は認めると述べた。
理由
一、原告が最大積載量が二トン以下である小型貨物自動車によって運送業を営む者であり、その運送する距離は短かく、運送する範囲もほぼ一定していることは、当事者間に争いがない。
二、原告の主張する請求原因事実第2ないし第4項は、いずれも当事者間に争いがない。
三、そこで、まず原告の本件各係争年分の総所得金額について検討する。
(事業所得金額について)
1 総収入金額について
証人越本吉太郎の証言およびこれによって真正に成立したと認められる乙第一号証、第二、第三号証の各一ないし三、第四号証の一、二、ならびに弁論の全趣旨を総合すると、原告の本件各係争年中の事業所得にかかる総収入金額およびその内訳が被告の主張するとおりである(別表(一)、1事業所得金額の総収入金額欄およびその内訳欄参照)ことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない(もっとも、このうち、雑収入の金額は当事者間に争いがない。)。
なお、原告は、被告が本訴において本件各更正処分がされた後に調査、収集した資料に基づいて主張立証することは許されない旨主張する。しかし、課税処分取消訴訟で処分の実体的違法が争われているとき、審理の対象となるのは客観的な租税債務の存否、範囲であるから、課税標準を認定するための資料は、原則として、当該処分時において被告に判明した事実であると否とにかかわらず、主張立証することができると解すべきである。したがって、原告の右主張は採用しない。
2 必要経費について
(一) 成立に争いのない第五号証の一、二、第六、第七号証の各一ないし三、証人越本吉太郎の証言によれば、原告の本件各係争年中の事業所得にかかる給料賃金が被告の主張するとおりである(別表(一)、1事業所得金額の給料賃金欄参照)ことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
(二) 原告の本件各係争年中の事業所得にかかる地代、支払利子、事故賠償金、専従者控除の額が被告の主張するとおりである(別表(一)、1事業所得金額の地代、支払利子、事故賠償金、専従者控除欄参照)ことは、原告の認めるところである。
(三) そこで、原告の本件各係争年中の事業所得にかかる「その他の経費」(標準経費)について判断する。
(1) 原告は、被告が右経費を推計することは許されないと主張するが、後記四、2で認定するように、被告は原告の協力を得ることができないため、右経費を実額によって把握することができなかったのであるから、被告がこれを推計することはやむをえないところといわなければならない。したがって、原告の右主張は採用しない。
(2) 自己所有車による収入の「その他の経費」(標準経費)について
成立に争いのない乙第一八号証、第一九号証の一ないし一二三、第二〇、第二一号証ならびに弁論の全趣旨によれば、本件実調率の算出根拠となった調査資料は、大阪国税局訟務官室からの要請に基づき、税務訴訟の証拠資料とするため、大阪国税局長が同局管内の全税務署八三署のうち大蔵省組織規程上種別「A」とされている税務署(主として大阪、京都、神戸の市内およびその近郊を管轄するいわゆるA級署)四三署の署長に対して、昭和四四年一月七日付で発した通達により、運送業者(小型車による運送業者に限る。)ほか二九業種につき統一的な作成基準を指示したうえで、各税務署長に同業者につき調査した結果を同業者調査表として提出させ、その後これを集計した結果得られたものであること、右調査の対象は、(イ)当該年分の所得について実地調査を行なった青色申告または収支実額調査を行なった白色申告の個人事業者であること、(ロ)当該業種目を主として営む事業継続者であること、(ハ)同業者調査表作成時において不服申立てまたは訴訟が係属中でないことという三条件を備える納税者に限定したこと、右に該当する納税者のすべてについて、前記各税務署において、その収入金額、差益金額、標準外経費控除前所得金額、所得金額、従業員数ならびにとくに運送業者については保有車輛台数および当該年の中途で取得または廃棄した車輛があるときはその年月日を調査し、その結果に基づいて同業者調査票を作成したこと、大阪国税局長が同業者調査票の提出を求めた右A級署四三署のうち、運送業につき昭和三八年分同業者調査票の提出があったのは、二七税務署合計七七例であり、その余の一六税務署からは該当者なしとして提出がなかったこと、右七七例のうち大阪市内の業者は一五署四三例であること、提出のあった同業者調査票に記載された収入金額、標準外経費控除前所得金額は、別表(二)の該当欄に記載されたとおりである(もっとも、別表(二)76の標準外経費控除前所得金額五、一八三、〇〇〇円は、五、一八〇、〇〇〇円の誤りである)こと、以上の事実が認められる。
右事実によれば、本件調査資料は、訴訟資料とすることを予定して収集されたものではあるが、その対象は既に調査を終えていた納税者の過去の事実であり、特殊事情のある納税者は同業者調査票を作成すべき対象から除外され、調査対象の選択およびその結果の収集過程に課税庁側の思惑や恣意が介入する余地は少なく、本件調査資料は一応客観性を有するものということができる。
そうだとすると、右七七例の平均の標準経費率、すなわち、本件実調率四五・八五〇パーセント<省略>によって求めた標準経費率を集計したもの。なお、この点に関する被告の計算は誤りである。)は、都市部における一般小型貨物自動車運送業者の平均的な標準経費率を示すものというべきところ、原告の業態が通常の一般小型貨物自動車運送業者のそれと異なるところはなく、また、昭和三七年から昭和三九年までの間に原告の営業形態につき大きな変化がみられなかったことは当事者間に争いがないのであるから、結局、本件実調率を適用して、原告の本件各係争年分の自己所有車による収入の「その他の経費」(標準経費)を推計することに合理性がないということはできない。たしかに、前記乙第二ないし第四号証の各一、二、成立に争いのない乙第二五ないし二七号証によれば、原告の保有する車輛に軽自動車が多い等特殊な事情が存在することも窺われるがそれらは、右の争いのない事実に照らしても明らかなように、すべて本件実調率を算出する過程において捨象ないし吸収されてしまうのである。
なお、成立に争いのない甲第二号証の一、二によれば、昭和三八年五月当時、社団法人大阪府トラック協会に所属する小型貨物自動車運送業者の数が一、二七〇(大阪市内九九一、大阪市外二七九)であることが認められ、これに比較すると、七七という業者数は必ずしも多いものということはできない。しかし、前記認定の事実に照らすと、一、二七〇の業者のうちには、原告の自己所有車による収入の「その他の経費」(標準経費)を推計する資料とするには不適当なものが相当数あると推認されるばかりでなく、本件実調率の算出根拠となった調査資料数七七は、それ自体、決して少ないものではない。また、右七七例のうちに、原告の主張する程度の偏差があったとしても、それだからといって、未だこれによる推計が推計として許容されるべき蓋然性の範囲を逸脱するものということはできない。したがって、本件実調率の算出根拠となった調査資料の数が少なく、その偏差が大きいから被告のした推計は合理性がないという原告の主張に理由がない。
また、右七七の業者も、原告と同様に、自己所有車による営業のほか、自動車を所有する運転手に依頼して運送させる方法および他の運送業者に委託して運送させる方法によっても営業していることはたやすく推認されるところである。そうだとすると、右各営業方法における標準経費率の差異を無視して、一律にこれを算出することの合理性が問われようが、後記(3)、(4)からも明らかなように、自己所有車による収入の「その他の経費」(標準経費)の率は、運転手所有車による収入および他店委託による収入のそれよりも相当程度低いのであるから、前記のようにして算出した標準経費率四五・八五〇パーセントを適用して原告の自己所有車による収入の「その他の経費」(標準経費)を推計したとしても、原告に有利にこそなれ不利にをるものではない(しかも、証人越本吉太郎の証言によれば、原告は、審査請求の段階において自己所有車による収入の「その他の経費」(標準経費)の率を約五〇パーセントとすることを積極的に争っていなかったことが認められる。)。したがって、この点をもって本件推計に合理性がないということもできない。
そうすると、原告の本件各係争年分の自己所有車による収入の「その他の経費」(標準経費)の額が、次のとおりなることは、計算上明らかである。
昭和三七年分 三、〇七四、一六二円
昭和三八年分 四、三三七、八四〇円
昭和三九年分 五、〇〇一、〇二六円
(3) 運転手所有車による収入の「その他の経費」(標準経費)について
前記乙第一号証、第二、第三号証の各一、第四号証の二、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる乙第二二号証、右乙第二二号証、証人越本吉太郎の証言、原告本人尋問の結果によって真正に成立したと認められる乙第一五号証、証人越本吉太郎の証言、原告本人尋問の結果を総合すると、原告は、本件各係争年中、しばしば、訴外西邑、由山、植野、杉原ら車輛を所有する運転手に佐藤運送店名義で運送させることによっても営業していた(いわゆる持込車輛による営業)が、そのつど、佐藤運送店の名義料、顧客の斡旋料として水揚料の二〇パーセントを控除し、残余の八〇パーセントを右運転手らに支払っていたことが認められる。
そうすると、いわゆる持込車輛による営業の場合、原告が右運転手らに対して支払った金員(総水揚量の八〇パーセント)は、とりもなおさず、原告にとって、運転手所有車による収入の「その他の経費」(標準経費)にあたるというべきである。
もっとも、原告は、右運転手らから受領した金員(総水揚量の二〇パーセント)のうちから、右運転手らのため、その所有する自動車の自動車税、社団法人大阪府トラック協会会員、労働者災害補償保険保険料等を支払っていた旨供述する。しかし、一般に、原告の供述するような煩雑な方法によって、右各費用を支払わなければならない理由はなく、むしろ、端的に、右運転手らが自ら右各費用を支払うものと考えられるところ、本件においても、前記乙第一号証、第二、第三号証の各一、第四号証の二、第二二号証によれば、原告が右運転手らに支払った金額は、多くとも一年につき一人あたり一、二〇〇、〇〇〇円前後にすぎず、右運転手らは、このうちから右各費用以外の費用(自動車購入代金、燃料代金、修理代金、検査費用)を支払わなければならないのであるから、結局、右運転手らが原告の専属の運転手であるということはできず、他に原告の供述するような支払方法をとらなければならない理由はこれを見出すことができない(右運転手らの一部のものが、原告名義で自動車税を支払ったとしても、それがその運転手の負担によるものであることは、乙第二二号証の記載から明らかである。)。したがって、原告の右供述は信用しない。
そうすると、原告の運転手所有車による収入の「その他の経費」(標準経費)が被告の主張するとおりである(別表(一)、1事業所得金額のその他の経費欄参照)ことは、計算上明らかである。
(4) 他店委託による収入の「その他の経費」(標準経費)について
前記乙第一号証、第二、第三号証の各三、証人越本吉太郎の証言によって真正に成立したと認められる乙第一六号証、証人越本吉太郎、同野川速水の各証言によって真正に成立したと認められる乙第一七号証、証人越本吉太郎、同野川速水の各証言、原告本人尋問の結果を総合すると、原告は、本件各係争年中、しばしば、堀内運送店、野川運送店等他の運送店に運送させることによっても営業していた(いわゆる傭車による営業)が、そのつど、手数料として水揚料の五パーセントを控除し、残余の九五パーセントを右各運送店に交付していたことが認められる。
そうすると、いわゆる傭車による営業の場合、原告が右各運送店に対して支払った金員(総水揚量の九五パーセント)は、とりもなおさず、原告にとって、他店委託による収入の「その他の経費」(標準経費)にあたるというべきである。
したがって、原告の他店委託による収入の「その他の経費」(標準経費)が被告の主張するとおりとなる(別表(一)、1事業所得金額のその他の経費欄参照)ことは、計算上明らかである。
(5) 以上の事実によれば、原告の本件各係争年中の「その他の経費」(標準経費)の額は、次のとおりとなる。
昭和三七年 六、八五九、二七九円
昭和三八年 八、一一一、二〇一円
昭和三九年 七、二四八、一一二円
(四) そうだとすると、原告の本件各係争年中の必要経費の額は、次のとおりになる。
昭和三七年 九、一三二、七四六円
昭和三八年 一一、八一六、六一八円
昭和三九年 一一、七九六、四九三円
3 そうすると、原告の本件各係争年分の事業所得金額は、次のとおりになる。
昭和三七年分 二、一二一、七〇四円
昭和三八年分 一、八二八、五一四円
昭和三九年分 一、五〇四、八一七円
(譲渡所得金額について)
原告の本件各係争年分の譲渡所得金額(損失)が被告の主張するとおりである(別表(一)、2譲渡所得金額(損失)欄参照)ことは、原告の認めるところである。
(総所得金額について)
そうすると、原告の本件各係争年分の総所得金額は、次のとおりになることとなる。
昭和三七年分 二、〇一五、五七二円
昭和三八年分 一、七〇七、三〇四円
昭和三九年分 一、四一六、四三八円
以上によれば、被告がした本件各更正処分(ただし、審査請求に対する大阪国税局長の裁決によって一部取り消されたもの)には、原告の総所得金額を過大に認定した違法がないことは明らかである。
四、次に、本件各更正処分の手続上の瑕疵につき原告が指摘する点を順次検討する。
1 原告は、本件各更正処分の理由が明らかでないから違法であると主張する。
本件更正通知書には理由として「総所得金額が過少と認められます。」と記載されているのみであること、原告が白色申告書によって本件各係争年分の確定申告をしたことは当事者間に争いがない。
ところで、所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前)第四四条第二項は、更正により課税標準および税額等がいかに変動したかを明瞭にするため、更正通知書に国税通則法第二八条第二項各号所定の事項を記載するほか、総所得金額等の所得別の内訳を附記すべきものとし、青色申告に対する更正については、右所得税法第四五条第二項が、右附記事項に代えて、更正の理由を附記すべきものとしているが、白色申告については、納税者に青色申告のごとく記帳およびその保存を義務づけていないと同時に、これに対する更正の場合に右のような理由附記をすべき旨の規定もないから、更正の理由を知うることが納税者にとって望ましいことであるとしても、その記載のないことをもって当該更正を違法とすることはできない。
したがって、原告の主張する本件更正処分の違法事由(二)は理由がないこととなる。
2 次に、被告が違法な調査をし、また民主商工会の弱体化を企図して差別的に本件各更正処分をしたかどうかについて検討する。
成立に争いのない甲第一号証、証人越本吉太郎、同中筋和夫、同野川速水、同万谷正治の各証言、原告本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。
原告は、昭和二九年から、佐藤運送店という商号で肩書住所地において運送業を営んでいるが、同時に、昭和三〇年から、浪速民主商工会および大阪民主商工団体連合会の各会員となり、浪速民主商工会理事、副会長、会長、税金対策部長等を歴任し、積極的に同会の活動に携わってきたものであるが、時折、同会に対し自己の運送業に関する帳簿書類の記録保存を依頼することもあった。
ところで、昭和四〇年七月三日午前九時三〇分ごろ、同会の税金対策部長であった原告ら約一〇名は、浪速税務署の稲田所得税課長および栄田同課長補佐に対し、同税務署員が同会員である電気器具販売業者八木豊国についていわゆる事後調査をした際同会から脱退するよう勧告したとして、抗議した。
ところが、たまたま、これよりさき、浪速税務署長は、原告の本件各係争年分の所得税に関して調査をすることとし、当時の通常の例に従い、まず原告の取引先(中川無線、協立電器、山菱ラス、松屋電器、大通産業、二宮無線、外山食品、清瀬運送等)に取引照会書を発送する等いわゆる反面調査をしていたが、引き続き、右抗議のころ、同税務署に勤務する国税調査官万谷正治、同北村喬に対し、その調査を命じた。
そこで同調査官らは、次のとおり調査をした。
(イ)昭和四〇年七月二九日、万谷調査官が原告に対し本件各係争年分の帳簿書類の提示を求めたところ、原告は、現在事務所に使用していた住居を改築中であり、手もとに帳簿書類がないから、改築が完成する同年九月末ごろまたは一〇月初めごろなら調査に応じると述べて強くこれを拒んだ。
右のように、原告は、事務所に使用していた住居を改造中であるとして帳簿書類の提示を拒絶したが、そのほか、被告が前記のような反面調査をしたことおよび万谷調査官の言動に多少高圧的なところがあったことに対する反発もその理由となっていた。
(ロ)同年八月四日、同調査官らは、調査のため、原告が仮住いをしていた「たつみ」アパートを訪れたが、原告が不在であった。しかし、同調査官らは、原告の妻の承諾を得てあがりこみ、さらに北村調査官は、原告の妻に対し、「これを見せてもらいますよ。」と告げて電話番号簿を閲覧し、これから原告の取引先の電話番号をメモしたが、折から原告方を訪れた浪速民主商工会事務局員らの申入れに応じて、右メモを破棄するに至った。
(ハ)同年同月五日、万谷調査官は、所用で、浪速区料理飲食店組合事務局長鮎川靖と面談した際、原告の性格、私行について問い合わせた。
(ニ)その後、同年同月一一日から二三日までの間、同調査官らは、原告の取引先である古書籍組合、大通産業、ワンビシガソリン、堀内運送店、野川運送店、宮本ダイハツ、津田書店等に、直接赴いて調査し、または、電話もしくは文書で照会したが、そのうち、万谷調査官が堀内運送店でした調査および北村調査官が野川運送店でした調査には、強引なところがあった。
なお、同年同月一四日、被告は、原告に対し、「青色申告にかかる書類等の提出要求」という書面を送付し、同書類等を提出しないときは、青色申告の承認を取り消す旨通知した。
(ホ)同年同月二四日、同調査官らは、前記「たつみ」アパートにおいて、原告に対し、本件各係争年分の帳簿書類の組織構成を知るため、昭和四〇年分の帳簿の提示を求めたが、原告は配車日報、月報を提示したにとどまり、その他現金出納帳、収支明細書等を提示することはなかった。
(ヘ)また、万谷調査官が同年同月二五日した調査および北村調査官が同年同月二八日した調査にも、高圧的なところがあった。
ところで、同年九月二〇日ごろ、原告が事務所に使用していた住居の改築が完成し、同年同月末ごろ原告の生活および営業状態も旧に復したが、同年一〇月一日原告の兄が死亡したこともあって、その後、原告が被告に対し帳簿書類等を提示して調査に協力することは全くなかった。
そこで、被告は、原告に対し、同年一〇月二六日、青色申告の承認を取り消すと同時に、本件各更正処分をした。
なお、その後、原告は、大阪国税局協議団の協議官越本および同実守の求めに応じ、本件各係争年中の事業所得にかかる収入金額に関する水揚帳ならびに給料賃金、事故賠償金等標準外経費に関する帳簿書類を提示したが、標準経費に関する資料は本件口頭弁論を終結するまで提示していない。
以上の事実が認められる。甲第一号証、証人中筋和夫、同野川速水の各証言、原告本人尋問の結果のうちには、右認定に反する部分もあるが、いずれも採用しない。
右事実によれば、同調査官らが原告の本件各係争年分の所得税に関してした調査は、いささか強引で高圧的なところがあり、そこに原告およびその取引先の反発を招くものがあったことは否定することができない。しかし、右のように本件調査にいささか行き過ぎの点があったとしても、その故をもって直ちにこれを違法な調査ということはできず、未だ不当な調査の範囲にとどまるものというべきであり、他に被告が違法な調査をし、また、民主商工会の弱体化を企図して差別的に本件各更正処分をしたという事実を認めるに足りる証拠はない。
なお、納税義務者に対する調査よりさきにいわゆる反面調査をすることはできず、また、納税義務者が合理的な理由に基づいて調査を拒否した場合あるいは納税義務者が調査に協力している場合、反面調査をすることはできないという原告の主張に理由がないことは、所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前)第六三条に照らし、明らかである。
また、成立に争いのない乙第一二号証によれば、原告が昭和三七年分所得税について確定申告をした後、昭和三八年一〇月七日修正申告をしたことが認められるが、原告本人尋問の結果によれば、右修正申告は、被告が浪速民主商工会を通じて、原告の申告した総所得金額等が少なすぎる旨連絡したところ、原告が自己の意思に基づいてしたものであることが認められるから、被告が本件更正処分をするについて妨げとなるものでないことは当然である。
したがって、原告の主張する本件各更正処分の違法事由(三)、(四)も理由がないこととなる。
五、よって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 石川恭 裁判官 増井和男 裁判官 米田絹代)
別表(一)
<省略>
(注) 自己所有による収入の「その他の経費」は、原告と同規模程度の同業者の平均一般経費率46.07%
運転手所有車による収入の「その他の経費」は、原告と同規模程度の同業者の平均一般経費率80.00%
他店委託による収入の「その他の経費」は、原告と同規模程度の同業者の平均一般経費率95.00%
によって算出した。
すなわち、
37年度 6,874,029円
自己所有車による収入の「その他の経費」 6,704,825×0.4607=3,088,912(円)
運転手所有車による収入の「その他の経費」 3,580,175×0.8000=2,864,140(円)
他店委託による収入の「その他の経費」 969,450×0.9500=920,977(円)
38年度 8,132,015円
自己所有車による収入の「その他の経費」 9,460,938×0.4607=4,358,654(円)
運転手所有車による収入の「その他の経費」 1,344,149×0.8000=1,075,319(円)
他店委託による収入の「その他の経費」 2,840,045×0.9500=2,698,042(円)
39年度 7,272,109円
自己所有車による収入の「その他の経費」 10,907,365×0.4607=5,025,023(円)
運転手所有車による収入の「その他の経費」 173,475×0.8000=138,780(円)
他店委託による収入の「その他の経費」 2,219,270×0.9500=2,108,306(円)
(以上)
別表(二)
<省略>
<省略>
<省略>
<省略>